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Read the Bible from start to finish, from Genesis to Revelation.
Duration: 365 days
Japanese Living Bible (JLB)
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創世記 27-29

祝福をだまし取るヤコブ

27 イサクは年をとり、目がほとんど見えなくなりました。そんなある日、長男のエサウを呼びました。

「エサウかい?」

「はい。何ですか、お父さん。」

2-4 「私ももう年だ。いつお迎えが来るかわからない。これから鹿を取って来てくれないか。私の好きな鹿肉料理を知ってるな。あの、実にうまい、何とも言えない味の料理だ。あれを作って持って来てくれ。そして、死ぬ前に長男のおまえを祝福したいのだ。」

ところが、二人の話をリベカが立ち聞きしていたのです。 6-7 エサウが鹿を取りに出かけてしまうと、彼女は次男ヤコブを呼び、一部始終を話しました。

8-10 「さあヤコブ、言うとおりにするのです。群れの中から上等の子やぎを二頭引いておいで。それで私がお父さんの好きな料理を作るから、お父さんのところへ持ってお行き。食べ終わったら、お父さんは亡くなる前に、エサウではなく、おまえを祝福してくださるでしょう。」

11-12 「だけどお母さん、そんなに簡単にはいきませんよ。だいいち、兄さんは毛深いのに、僕の肌はこんなにすべすべです。お父さんがさわったら、すぐにばれてしまいます。そのあげく、お父さんはだまされたと思って、祝福するどころか、のろうに決まってます。」

13 「もしそんなことになったら、私が代わりにのろいを受けます。今は言うとおりにしなさい。さあ、何をぐずぐずしてるの。早く子やぎを引いておいで。」

14 ヤコブは言われたとおりにしました。連れて来た子やぎで、リベカは夫の好物の料理を作りました。 15 それから、家に置いてあったエサウの一番良い服を出して、ヤコブに着せました。 16 また、やぎの毛皮を手にかぶせ、首の回りにも毛皮を巻きました。 17 あとは、おいしそうなにおいのしている肉料理と焼きたてのパンを渡して、準備完了です。 18 ヤコブは内心びくびくしながら、それらを持って父親の寝室に入りました。

「お父さん。」

「だれだね、その声はエサウかい? それともヤコブかい?」

19 「長男のエサウです。お父さんのおっしゃるとおりにしました。ほら、お父さんが食べたがってたおいしい鹿の肉ですよ。起き上がって、座って食べてください。そのあとで、僕を祝福してください。」

20 「それはまた、ずいぶん早く鹿を捕まえたものだな。」

「ええ、主がすぐ見つけられるようにしてくださったのですよ。」

21 「それはそうと、こちらへおいで。おまえがほんとうにエサウかどうか、さわって確かめよう。」

22 そばへ行ったヤコブをイサクは手でなで回しながら、ひとり言のようにつぶやきます。「声はヤコブそっくりだが、この手はどう考えてもエサウの手だ。」

23 イサクはすっかりだまされてしまいました。そして、エサウになりすましたヤコブを祝福しようとしました。

24 「おまえは、ほんとうにエサウかい?」

「ええ、もちろん私ですよ。」

25 「では鹿肉料理を持っておいで。それを食べて、心からおまえを祝福しよう。」

ヤコブが料理を持って来ると、イサクは喜んで食べ、いっしょに持って来たぶどう酒も飲みました。

26 「さあここへ来て、私に口づけしてくれ。」

27-29 ヤコブは父のそばへ行き、頬に口づけしました。イサクは息子の服のにおいをかぎ、いよいよエサウだと思い込みました。「わが子の体は、主の恵みをたっぷり頂いた大地と野の快い香りでいっぱいだ。主がいつも十分な雨を降らせ、豊かな収穫と新しいぶどう酒を与えてくださいますように。たくさんの国がおまえの奴隷となるだろう。おまえは兄弟たちの主人となる。親類中がおまえに腰をかがめ、頭を下げる。おまえをのろう者はみなのろわれ、おまえを祝福する者はすべて祝福される。」

30 イサクがヤコブを祝福し、ヤコブが部屋を出て行くのと入れ替わるように、エサウが狩りから戻って来ました。 31 彼もまた父の好物の料理を用意し、急いで持って来たのです。「さあさあ、お父さん、鹿の肉を持って来ましたよ。起き上がって食べてください。そのあとで、約束どおり私を祝福してください。」

32 「何だと? おまえはいったいだれだ。」

「ええっ? 私ですよ。長男のエサウですよ。」

33 なんということでしょう。イサクは見る間にぶるぶる震えだしました。「では、ついさっき鹿の肉を持って来たのはだれだったのだ。私はそれを食べて、その男を祝福してしまった。いったん祝福した以上、取り消すことはできない。」

34 あまりのショックに、エサウは気が動転し、激しく泣き叫びました。「そんな、ひどいですよ、お父さん。私を、この私を祝福してください。ね、どうかお願いします、お父さん。」

35 「かわいそうだが、それはできない。おまえの弟が私をだましたのだ。そして、おまえの祝福を奪ってしまった。」

36 「ヤコブときたら、全く名前どおりだ。『だます者』〔ヤコブという名には『つかむ人』25・26以外に、この意味もある〕とは、よく言ったものだ。あいつは長男の権利も奪った。それだけでは足りず、今度は祝福までも盗んだってわけか。お父さん、念のため聞きますが、私のためには祝福を残してくれていないのですか。」

37 「すまんが、私はあれを、おまえの主人にしてしまった。おまえばかりではない。ほかの親類の者もみな、あれの召使になるようにと祈った。穀物やぶどう酒が豊かに与えられるとも保証してしまったし……、ほかにいったい何が残っているというのだ。」

38 「それでは、私にはもう何一つ祝福が残っていないとおっしゃるのですか。あんまりだ、お父さん。何とかならないのですか。どうか、どうか私も祝福してください。」

イサクは何と言ってよいかわかりません。エサウは声を上げて泣き続けました。 39-40 「おまえは一生苦労が絶えないだろう。自分の道を剣で切り開いていかなければならないのだから。ただ、しばらくは弟に仕えることになるが、結局はたもとを分かち、自由になるだろう。」

家を出るヤコブ

41 このことがあってからエサウは、ヤコブのしたことを根に持つようになりました。「お父さんも先は長くはない。その時がきたら、ヤコブのやつを必ず殺してやろう。」

42 ところが、このたくらみは感づかれてしまいました。直ちに、母リベカのところにその報告がきました。リベカは急いでヤコブを呼びにやり、エサウがいのちをねらっていることを教えました。 43 「いいね、ハランのラバン伯父さんのところへ逃げるのです。 44 ほとぼりが冷めるまで、しばらくお世話になるといいわ。 45 そのうち兄さんも、あなたのしたことを忘れるでしょう。そうなったら知らせるから。一日のうちに息子を二人とも失うなんて、とても耐えられません。」

46 そして、夫のイサクにうまく話を持ちかけました。「私はこのあたりの娘たちには我慢なりません。もういやけがさしました。もし、ヤコブがこの土地の娘と結婚することになったら、生きているかいもありません。」

28 そこで、イサクはヤコブを呼び寄せ、祝福して言いました。 「おまえはカナン人の女と結婚してはいけない。パダン・アラムに、ベトエルといってな、おまえのおじいさんの家がある。すぐにそこへ行きなさい。ラバン伯父さんの娘と結婚するのだ。 全能の神様がおまえを祝福し、たくさんの子どもを授けてくださり、たくさんの部族を持つ大きな国にしてくださるように。 おじいさんのアブラハムに約束されたすばらしい祝福が、おまえと子孫に受け継がれるように。私たちは今ここでは外国人だが、おまえの代になって、この地を手に入れることができるように祈る。神様がおじいさんに約束されたように。」

こうしてイサクは、ヤコブをパダン・アラムのラバンのもとへ送りました。アラム人ベトエルの子ラバンは、リベカの兄で、ヤコブの伯父に当たります。

6-8 エサウは、父親がこの土地の娘たちを快く思っていないこと、そして両親が、ヤコブの結婚相手をカナン人の女からではなくパダン・アラムで見つけるために、ヤコブを祝福したうえで送り出したことを知りました。ヤコブも両親の言いつけどおり出発したといいます。 それでエサウは、伯父イシュマエルの家へ行き、今いる妻のほかに、さらに妻をめとりました。アブラハムの子イシュマエルの娘で、ネバヨテの妹マハラテでした。

10 さて、ヤコブはベエル・シェバを出発し、ハランへ向かいました。 11 とある場所まで来ると、日がとっぷり暮れたので、野営することにしました。あたりに転がっている石を枕に、ごろんと横になりました。

12 その晩のことです。ヤコブは不思議な夢を見ました。目の前に天までも届く階段がそびえ、神の使いが上ったり下りたりしているのです。 13 ふと見ると、神がそばに立っておられます。「わたしは神、アブラハムの神、あなたの父イサクの神、主である。あなたがいま寝ている土地はあなたのものだ。それを、あなたとその子孫に与えよう。 14 子孫は地のちりのように多くなり、東西南北、あらゆる方角に増え広がり、この地全体に住みつくだろう。あなたとあなたの子孫によって、世界中の国々が祝福される。 15 あなたがどこへ行こうと、わたしはいつも共にいて、あなたを助ける。無事この地に帰れるように必ず守ろう。約束のものをすべて渡すまで、わたしはいつでも共にいる。」

16-17 そこで目が覚めました。「主はここにもおられる。気づかなかったが、ここは神様の家なのだ。おそれ多くも天国への入口だったのだ。」ヤコブは怖くなって思わず叫びました。 18 次の朝早く起き、枕にした石を立てて記念の柱とし、オリーブ油を注ぎかけました。 19 そして、そこをベテル〔「神の家」の意〕と名づけました。そのあたりは以前、ルズと呼ばれていました。

20 ヤコブは神に誓いました。「神様、もし主がこの旅で私を助け、守ってくださり、衣食にも不自由させず、 21 無事に父の家に帰してくださって、私の神様となってくださるなら、 22 この記念の柱を礼拝の場所とし、神様から頂いた物すべての十分の一を必ずおささげします。」

ラケルとの出会い

29 ヤコブはさらに旅を続け、ついに東の国に着きました。 そこは広々とした牧草地で、見ると、井戸のそばに羊が三つの群れになって寝そべっていました。井戸の口には重い石のふたがかぶせてあります。 羊の群れが全部そこに集まるまで石のふたをはずさないのが、この地方の習慣でした。水をやったあとは、また元どおり石でふたをしておくことになっていました。 ヤコブは羊飼いたちに近づき、どこに住んでいるのか尋ねました。

「ハランだよ。」

「では、ナホルの孫でラバンという人をご存じでは?」

「ラバンだって? ああ、よく知ってるよ。」

「そうですか。その方はお元気ですか。」

「元気だとも。順調にやっているしね。ああ、ちょうどよかった。ほら、あそこに羊を連れてやって来る娘、あれが娘さんのラケルだ。」

「ありがとうございました。ところで余計なことかもしれませんが、羊に早く水をやって、草のある所へすぐ帰してやらなくていいのですか。こんなに早く草を食べさせるのをやめたら、腹をすかせませんか。」

「羊や羊飼いがみな集まるまで、井戸のふたは取らない決まりでね。それまで水はお預けなんですよ。」

話をしている間に、ラケルが父の羊の群れを連れて来ました。彼女は羊飼いだったのです。 10 ヤコブは、彼女が伯父ラバンの娘で、いとこに当たり、羊はその伯父のものだとわかったので、井戸に近づいて石のふたをはずし、羊に水を飲ませました。 11 それから、ラケルに口づけしました。あまりうれしくて気持ちが高ぶり、とうとう泣きだしたほどです。 12-13 そして、自分は彼女の叔母リベカの息子で、ラケルにとってはいとこなのだと説明しました。ラケルはすぐ家へ駆け戻り、父親に報告しました。甥のヤコブが来たのです。すぐ迎えに行かなければなりません。ラバンは取る物も取りあえず駆けつけ、大歓迎で家に案内しました。ヤコブは伯父に、これまでのことを語りました。話は尽きません。

14 「いやあ、うれしいなあ。甥のおまえがはるばるやって来てくれたのだからな。」ラバンも喜びを隠せません。

ヤコブの結婚

ヤコブが来てから、かれこれ一か月が過ぎたある日のこと、 15 ラバンが言いました。「ヤコブ、甥だからといって、ただで働いてくれることはないんだよ。遠慮しなくていい。どんな報酬がほしいかね。」

16 ラバンには二人の娘がありました。姉がレア、妹があのラケル。 17 レアは弱々しい目をしていましたが、ラケルのほうは美しく、容姿もすぐれていました。 18 ヤコブはラケルが好きだったので、ラバンに言いました。「もしラケルさんを妻に頂けるなら、七年間ただで働き、あなたに仕えます。」

19 「いいだろう。一族以外の者と結婚させるより、おまえに嫁がせるほうがいいから。」

20 ヤコブは、ラケルと結婚したい一心で、七年間けんめいに働きました。彼女を心から愛していたので、七年などあっという間でした。 21 ついに、結婚できる時がきました。「さあ、すべきことはみなやり終えました。約束どおりラケルさんを下さい。彼女といっしょにさせてください。」

22 ラバンは村中の人を招いて祝宴を開き、みんなで喜び合いました。 23 ところがその夜、暗いのをさいわい、ラバンは姉のレアをヤコブのところに連れて行ったのです。ヤコブはそんなこととはつゆ知らず、レアといっしょに寝ました。 24 ラバンは、奴隷の少女ジルパをレアにつけてやりました。 25 朝になって、ヤコブが目を覚まし、見ると、レアがいるではありませんか。憤まんやる方ない気持ちです。すぐさまラバンのところへ行き、食ってかかりました。「なんてひどいことをするんですか! ラケルと結婚したい一心で、私は七年も骨身を惜しまず働いたんですよ。その私をだますなんて、いったいどういうことですか!」

26 「まあ、気を落ち着けてくれ。悪かったが、われわれのところでは、姉より先に妹を嫁に出すことはしないのだよ。 27 とにかく婚礼の一週間をこのまま過ごしてくれたら、ラケルもおまえに嫁がせよう。ただし、もう七年間ここで働いてもらうということになるが。」

こううまく言い抜けられては、しかたありません。 28 ヤコブはさらに七年働くことにしました。そして、ようやくラケルと結婚できたのです。 29 ラケルは奴隷の少女ビルハを召使として連れて来ました。 30 こうしてヤコブはラケルと床を共にしました。ヤコブはレアよりも彼女のほうを愛していたため、さらに七年も余計に、ラバンのもとで働いたのです。

レアとラケルの争い

31 ヤコブがレアに冷たくするので、主は彼女に子どもを授け、ラケルには子どもがいませんでした。 32 レアが産んだ最初の子は男の子で、レアは、「主は私の苦しみをわかってくださった。子どもができたのだから、夫もきっと私を愛してくれるでしょう」と言って、ルベン〔「私の息子を見てください」の意〕と名づけました。 33 次も男の子で、彼女は、「主は私が愛されていないと知って、もう一人子どもを与えてくださった」と言って、シメオン〔「神は聞いてくださった」の意〕と名づけました。 34 さらに三人目の子どもが生まれました。今度も男の子で、彼女は、「三人も男の子を産んだのだから、今度こそ愛してもらえるに違いない」と言って、レビ〔「結びつく」の意〕と名づけました。 35 さらに子どもが生まれました。また男の子で、彼女は、「今こそ主をほめたたえよう」と言って、ユダ〔「ほめたたえる」の意〕と名づけました。そのあと、彼女には子どもが生まれませんでした。

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